輪転印刷と枚葉UV印刷を両輪として発展
小田原市に本社を構える文化堂印刷株式会社は、「輪転の文化堂印刷」として名を馳せる、1947年創業の歴史ある総合印刷会社です。
B縦全判機5台を含む合計7台の輪転機を擁する湘南工場は全国有数の輪転工場で、B4判換算で一日2,500万枚の生産能力を誇り、折込チラシやカタログの大量印刷で圧倒的な強みを発揮しています。その一方で、700線の高精細印刷技術HBP-700の独自開発やUV印刷技術の早期導入など、枚葉印刷分野でも異彩を放つ存在です。
輪転印刷の湘南工場と枚葉UV印刷の本社工場が両輪となって、クリエイティブから印刷、加工、アッセンブリ、発送まで一貫した生産体制を構築することで、同社の印刷ビジネスは大きな発展を続けています。
ハイデルベルグチンプー工場製
スピードマスターCD102の国内第一号機を導入
2018年2月、同社は17年前に初めて導入したUV印刷機、ハイデルベルグのスピードマスターCD102を最新機種のCD102-6+L UVに入れ替えて、スピードマスター菊全判UV印刷機による3台体制を整えました。
新たに導入したCD102は中国・上海近郊にあるハイデルベルグ社の製造拠点、チンプー工場で組み立てられたチャイナモデルで、国内第一号機となりました。
専務取締役の中西一人氏は、今回の機種更新の経緯について、次のように説明しています。
「2001年に導入したCD102は、長年にわたって当社で唯一のUV印刷機でした。2013年に新しいUV印刷機スピードマスターCX102を2台導入するまでのあいだ、多くの無理難題にも応えてくれました。
24時間フル稼働の過酷な運用が続いたせいか、近年では品質や生産性の面で新しい印刷機との差が出てきて、仕事を回しづらくなっていました。そこで最新機種への更新を決断し、年度末の繁忙期に間にあうUV印刷機をとハイデルベルグさんに相談すると、今回の印刷機をご提案いただきました」
ドイツ本社に発注すると製造半年、輸送2カ月で最低でも8カ月かかりますが、標準モデルの組み立て作業に特化しているチンプー工場の場合、製造期間が短くて済み、輸送期間も1カ月程度短縮できます。
今回、同社が導入したCD102はチンプー工場のデモ機だったので、要望通りの納期が実現でき、しかも工場で実機を確認・納得した上で導入することができました。
チンプー工場を視察した本社工場 工場長代理の岩谷光晃氏は「広大な敷地を持つ、きちんと管理された素晴らしい工場でした」と第一印象を語っています。
使われる部品はすべてドイツ製で、現地スタッフによる組み立て作業も「入念なチェック体制にもとづく、丁寧で確実な仕事ぶりだった」とドイツと変わらない厳格な製造環境を見て安心したそうです。
現地では実運用を視野に入れた厳しい印刷テストも何度か実施し、無事、繁忙期を控えた2月には本社工場に設置することができました。また立ち上がりもスピーディで、月末には本格的な稼働がはじまりました。
CD102とCX102を核にパッケージ市場に挑戦
新しいCD102の導入によって「刷版、ブランケット、用紙サイズが同じ3台の印刷機の品質レベルが同じになり、仕事を相互に融通しあうなど生産管理が容易になった」と中西専務は喜んでいます。
2013年に導入したスピードマスターCX102は、1台を主にクリアファイルやDVDケースなど特殊原反の仕事に使い、もう1台は最高速度に近い毎時15,000〜16,000枚で一般商業印刷の仕事で活用することを基本にしています。
品質、生産性が追いついた新しいCD102はこの2台をサポートする確かな戦力になりました。また3台すべての印刷機が薄紙から厚紙まで多種多様な仕事に対応できるため、仕事量をうまく平準化することができます。
CD102の実運用時の平均的な生産速度は毎時13,000〜14,000枚。普通紙なら最高速の毎時15,000枚でも安心して運用できるそうです。
以前の機械は毎時7,000回転ほどだったので、生産性は約2倍に向上しました。
「スペック通りの速度が出せる高い生産性、24時間フル稼働にもビクともしない高耐久性、そして幅広い用紙への対応力は、ハイデルベルグ機ならではのもの」と岩谷工場長代理は太鼓判を押してくれました。さらに新しい印刷機の導入によって「オペレータの士気が上がり、印刷機の性能を充分に発揮したい、機械を極めたいという姿勢もでてきた」そうです。
社員のモチベーションが上がることで「結果として品質、生産性の向上にもつながっている」と中西専務は指摘しています。
5月には紙器メーカーとの業務提携もはじまり、パッケージ印刷への本格参入も決まりました。
一般商業印刷から写真集などの高精細印刷、PPやプラスチックなどの特殊原反、そしてパッケージ印刷へと、同社のビジネスはさらに大きく飛躍しようとしています。
ハイデルベルグ品質を提供する
中国・チンプー工場
中国・上海のチンプー区に位置するチンプー工場は、ハイデルベルグが初めてアジア/中国地区に設立した製造拠点で、ドイツのウィスロッホ-ヴァルドルフ(印刷機製造、部品製造)、アムステッテン(鋳造・部品製造)、ブランデンブルグ(部品製造)、ルートヴィヒスブルク(折り機組み立て)とともにワールドワイドな生産ネットワークを構築しています。
ドイツ製部品を使用し、ドイツ本社でトレーニングを受けた現地スタッフがドイツと全く同じ生産体制のもとで印刷機の組み立てを行い、ハイデルベルグ品質を提供しています。
2006年にスピードマスターSM52の組み立てを開始し、その後SM74、CD102の組み立ても順次スタートし、2013年9月には総出荷台数1,000台を達成しました。現在はSX74や中国向けのCS92などの組み立ても行っています。
10万平方メートル(東京ドーム2つ分)の敷地には組立て工場のほか、プリントメディアセンター、トレーニングセンター、ロジスティックセンターを併設。400名を超える従業員を抱えISO 9001ならびにISO 14001の認証を取得しています。
全世界で50,000ユニット以上。納入実績No.1を誇るストレート印刷機
スピードマスターCD102-6+L UV
- ハイデルベルグの最上位機種XLシリーズの技術を継承。
- プリセットプラスフィーダ/デリバリ、自動洗浄装置など豊富な自動化装置を搭載し、すぐれた操作性と作業性を実現。
- 毎時15,000枚の最高印刷速度でも、薄紙から厚紙まで安定した用紙搬送で、トップクラスの印刷品質を達成。
- 分光光度計を内蔵した品質管理装置「プリネクトイージーコントロール」を標準装備し、スピーディな色合わせをサポート。
- デリバリ2灯+胴間2灯のDryStar UV乾燥装置を搭載。
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