新たに会社を興す以上、「根拠ある原価をもとに売価設定する」、「色校正に時間とコストをかけない」、「稼働前の準備に時間をかけない」、「生産時間を1秒でも短縮する努力を怠らない」、「時間=コスト意識を徹底する」など新しいチャレンジを続けることで、価格競争の激しいWeb to Printの世界で、急成長を遂げてきた印刷会社があります。
同社ではプリネクトワークフローによる正確な原価管理、さらにはMISとの連携で徹底した自動化を推進しています。
不況下の印刷業界で急成長を遂げる新興企業
静岡県富士宮市に本社を構える株式会社P’Sネットワークは、ポケットティッシュやボックスティッシュ、クリアファイル、ノート、うちわなどオリジナル販促商品のネット通販で大きく成長してきた印刷会社です。印刷産業全体の市場規模が縮小し続けるなか、平成15年の設立以来わずか9年で急成長を遂げてきました。
その理由はビジネスへの徹底したこだわりです。これまでのビジネス慣習に疑問を持ちながら、製造業のあるべき姿を追求し続けてきた結果が今にあります。また商品である印刷物の価値を高めると共に、生産工程全体の自動化・効率化を図るため、最先端の設備を積極的に導入しています。
スピードマスターXL75とスピードマスターSM52の5色UV機を設備した印刷部門を中心に、プリプレスから断裁、打抜きまでハイデルベルグ製品で統一。さらにオフセット印刷の国際規格ISO12647-2を認定取得し、数値管理による高度なカラーマネジメント環境も構築しています。
従来のビジネス慣習を踏襲していては成功できない、と考えてコストの見える化を推進
同社の代表取締役社長である山田浩之氏は、ビジネスに対する思いを次のように語っています。
「会社を経営する以上、きちんと利益を出して取引先や社員に対して責任を果たしてゆきたいと思っていました。そのためにはコストの見える化が絶対に必要です」
ひとつひとつの仕事でどれだけ収益を上げているのかを把握できなければ、競争の激しいWeb to Print ビジネスで成功することはできません。山田社長は以前、印刷会社の営業マンとして働いていましたが、当時はまだまだ「どんぶり勘定」の世界でした。
「顧客ごとに通し単価が違う」、「月を締めてみないと儲けが分からない」といったことも良くあったそうです。
こうしたビジネス慣習に疑問を持った山田社長は、起業するにあたって、原価管理を正確に行うことを経営課題のひとつに掲げました。もちろん手書きの日報などでも管理はできますが、手間と労力がかかり、正確性にも疑問が残ります。このため、数値化と自動化による、より正確でシンプルな原価管理を目指しました。
「新たに会社を興す以上、これまでと同じことをやっていては決して成功できない。新しいことにチャレンジし続けなくてはならない」と山田社長は考えたのです。
数値化と自動化をモットーにプリネクトワークフローを導入
同社では設立当初からMIS(経営情報システム)を導入し、工程ごとのコスト管理を徹底しています。同時にMISに各機器の稼働状況を正確にフィードバックできる生産システムの構築にも取り組みました。
現在ではスープラセッターA75、スピードマスターXL75、ポーラー137XT plus自動断裁システム、バリマトリックス105 CS打抜き機などハイデルベルグの先進設備をプリネクトワークフローでネットワーク統合し、JDF(電子作業指示書)ベースでMISと完全に連動させています。
このようにハイデルベルグ製品を中心にワークフローを構築した理由について、山田社長は次のように語っています。
「勘や経験に頼るのではなく、数値による管理や製造が行えるシステムが必要でした。アナログ的な機械ではなく、デジタル技術を駆使したシステムなら、コスト管理はもちろん、自動化も容易になります。このように当社の成長に最も貢献する製造システムとは何かを突き詰めてゆくと、結局、ハイデルベルグしかありませんでした」
数値化を追求すれば「コストの見える化だけでなく、次の作業目標も明らかになる」と山田社長は続けます。つまり作業の標準化や自動化をひとつ進めるだけで、目に見えてコストが下がるため、収益の向上に直結するというのです。
たとえば、断裁ひとつとっても、寸法を手作業で入力するのではなく、プリプレスのデータを活用すれば、断裁順序を考える時間すら必要ありません。同社ではこのような自動化を徹底的に進めることで、「1秒でも早く」とコスト削減を図っています。
「1ジョブあたりの生産時間が削減できればコストも下がります。コストが下がれば利益は出るし、製品の競争力も高まります。確かな裏付けがあるので、新しい勝負に打って出てもリスクはありません」
こう満足げに語る山田社長ですが、数値化と自動化によるコスト削減の取り組みは、今でもあらゆる工程にわたって続いています。そのひとつが面付け作業の自動化でした。
付け合わせ面付けを完全自動化するプリネクトギャングアシスタントを国内初導入
同社ではこれまで、付け合わせの面付け作業を専任のオペレータがほぼ1日かけて行っていました。この作業を自動化して製造コストを削減するために、ハイデルベルグのプリネクトギャングアシスタントを導入しました。このギャングアシスタントはひとつひとつのジョブ情報をMISから一般的なXML形式で取り込むことができます。
この機能を利用して、同社ではMISに登録された30〜40のジョブを一括選択して、ギャングアシスタントに取り込んでいます。作業はワンクリックで終了し、その後1分もかからずに、最も効率的な付け合わせ面付けが複数台にわたって自動的に生成されます。面付け情報もMISに自動的にフィードバックされるため、後工程に必要な「印刷予定表」や「作業指示書」も、これまで以上に手間なく出力できるようになりました。
さらにこの面付け情報を断裁システムに転送することで、面倒な断裁機のプリセットまで自動化しています。
導入効果について、山田社長は次のように語っています。
「運用しはじめて約1年がたちました。製版オペレータの作業時間は少なくとも1/3以下になりました。正直まだまだ下がると期待しています。また面付け作業だけでなく、後工程の効率化にもつながっています」
現状に満足することなく、さらなる飛躍を目指すP’Sネットワーク
低価格化が続く印刷業界のなかでも、特に価格競争が激しいWeb to Printビジネスを勝ち抜くためには、コスト意識の徹底が重要です。一点一点の商品コストを把握した上で、他社よりも安い価格を設定して利益を確実に確保できれば、同社のように増収増益が可能になります。
「今のままで良いのか、つねに現状に疑問を持つことを社員にも言い続けています。皆、厳しい厳しいと言いますが、それがビジネスですから」
これまでのビジネス慣習に疑問を持つことからはじまった、山田社長の挑戦にゴールはありません。常識を疑い、今を変革してゆく情熱を持ち続ける限り、同社はさらに大きな飛躍を遂げることでしょう。
【企業プロフィール】
株式会社P’Sネットワーク
代表取締役: 山田浩之
設立: 平成15年5月20日
従業員数: 20名
本社所在地: 静岡県富士宮市浅間町6-6
TEL: 0544-25-6062
URL: http://www.psnw.co.jp/
事業内容: ノベルティ(オリジナル販促商品の企画&制作&販売)
クリエイティブ(グラフィック制作/SPツール制作/デザイン)、
プリンティング(デジタル撮影/画像処理/製版/印刷/加工)