おはようございます!
”イノベーションツアー2020 – ポストプレス –”が、今月9日から16日にかけて実施されました。そのツアー に同行したハイデルベルグ・ジャパン ポストプレスのレジェンド、デジタルテクノロジー部製本機担当スペシャリスト 中村氏に、終わったばかりのツアーについて話を聞いてみました。それでは早速….
J-Connect 編集部(J編):ツアーお疲れ様でした。このポストプレス(製本後加工)に特化したツアーはいつも大好評で、開催を発表するとすぐに満員御礼、しかも熱心なリピーターの方も多いと聞きました。まずは、ツアーの歴史について聞かせてください。
中村:はい、おかげ様でいつも多くの勉強熱心なお客様にご参加頂き感謝しています。ハイデルベルグ・ジャパンでは、実はこうしたポストプレスにフォーカスしたツアーは随分昔からやっています。正確に言うと1988年のIPEXに製本加工に携わるお客様をお連れしたのが最初だったのではないかと思います。8年前くらいまでは、展示会やハイデルベルグ社、ポーラー社訪問がメインで、現地のお客様訪問は1社程度でした。が、お客様のご意見を伺うと、現地のお客様訪問が一番興味深く勉強になるということだったので、今ではお客様訪問を中心にツアーを企画するようになりました。実際、今年は5社のユーザー訪問をメインに、ハイデルベルグ本社、ポーラー社訪問をツアーに組み込みました。
J編:現地のユーザー訪問をそれだけ複数企画するというのは、いくらドイツ本社との人脈をもった製品担当者でも、とても大変ですよね?
中村:よくぞ、言ってくださいました!はい、実はとても大変なんです。ポストプレスの場合、特に、折り機、断裁機等複数の社内外のカウンターパートと話をしなければなりませんし、見学をお願いする現地のお客様の立場に立ってみれば、私たちの訪問には何のメリットもないわけですから。そこをお願いして見学を実現するというのは実はとっても大変なんです。
J編:でも、いつも楽しそうにツアー企画されてますよね?なぜですか?
中村:それはやはりお客様に喜んで頂けるのがとても嬉しいからです。もうひとつは、“百聞は一見に如かず”です。つまり、私たちがお伝えしたいことが、言葉やビデオで説明しても伝わらないことがたくさんあります。例えば、何となくデジタル化、自動化、省力化等ドイツは進んでいるというイメージを皆さんもっているとは思いますが、実際に現場で見て、ドイツの人から話しを直接聞いて頂くと説得力が全然違うんですよ。そして、その見学がきっかけとなり、お客様が帰国してからビジネスを変革し成功される。そんな経験をしたら、大変でもまた企画しちゃおう!という気になっちゃうんですよね。
J編:なるほど!ところで、今回のツアーのテーマは何だったのですか?参加されたお客様には何をお伝えしたかったのでしょうか?
中村:今回のテーマは、ずばり“働き方改革”です。今年4月から、働き方改革関連法によって中小企業にも従業員の時間外労働を年720時間以内にすることが義務づけられます。月100時間を超えてはならず、2~6カ月平均で月80時間以内にしなければなりません。一部の業種を除き、違反があれば30万円以下の罰金か6カ月以下の懲役を科せられるそうです。待ったなしの状況です。しかし、まだまだ日本の製本加工業界は労働集約型。働き方改革を進めるには多くのアイデア、そしてアクションが必要です。そうした働き方改革を実践するために役立てて頂けるようなツアーを企画したいと思いました。そして、受け入れ側の現地ドイツのカウンターパートにも日本の事情を深く理解してもらうために、日本経済新聞さんの働き方改革についての記事を英訳して事前に現地の担当者にも送ったくらいです。
J編:いやー、そこまでやったんですか!ところで、今回のツアーで中村さん自身が印象に残ったポイントをいくつかお話してもらえませんか。
中村:そうですね。たくさんありましたよ。まずは、ツアーに参加されたお客様にとっても印象的だったようなので、あえてポストプレスではない部分からスタートしましょう。
1つ目は、やはりデジタル化が進んでいるということです。訪問したほぼすべてのお客様は、方法は違えど生産管理はポストプレスの工程も含めてすべてデジタル化し、見える化をしていましたね。
2つ目は、無人の製版室。これも訪問した印刷会社が無人で版を出力してたのが印象的でした。製版室でスープラセッターが黙々と版を出力している。たまにオペレータが版を取りに来るという状況です。まさにインダストリー4.0を目の当たりにした感じでした。
3つ目は、実際の現場で見たポーラーPACEの生産性。ポーラーのPACEとシステム200が並んで稼働している工場があったのですが、PACEの方は人ひとり、システムの方は人ふたり、アウトプットは同じという状況でした。隣同士で比較してみるとやはり大きな生産性の違いを感じました。
4つ目は、パラミディス デルタ。ほぼすべてのお客様が折り機の後ろにパラミディス デルタを付けて省力化を実現していました。ある1社などは、ページ折をパラミディス デルタで帯掛け後、パレットに積んでいました。帯がもったいないと思われるかもしれませんが、全体最適を考えるとこちらの方がよいとのことです。
5つ目は、パレットフィーダーが多いこと。ラウンドフィーダーは生産性が良いのですが、より高生産を狙うのには人が必要。でも、パレットフィーダーは常に積み込む人がいらない。これも全体最適ですね。
6つ目は、アニカラ―で印刷するかデジタル機にするか、KAMAで抜くかデジタルカッターで抜くか等、デジタルにするかアナログにするかのプロセスをAIが判断して振り分けるというシステムを採用している会社がありました。
7つ目は、プレゼンテーションの動画でしか見れませんでしたが、drupa2020で発表予定のP-スタッカー。P-スタッカーとは、折り機から出てきた折り丁を自動でパレットに積むロボットです。スタールフォルダーKH82-Pのような最新の折り機のスピードが、スペックでは15000枚/時 (TH82Pは16000枚/時) と従来の倍の速度になった今、このP-スタッカーを使えば、ひとりのオペレータで時間30000枚をこなすのも夢ではなくなります。まさに、ポストプレスの働き改革を実践できるシステムです。それから….
J編:….中村さん、中村さん、わかりました。ありがとうございます。見どころ満載だったようですね。これ以上お話頂いてもJ-Connect 1回では載せられないので詳細はまた今度聞かせてください。今日はありがとうございました!
イノベーションツアー2020 – ポストプレス - スケジュール詳細