おはようございます!
製品担当部署エクイップメントソリューションズ本部の曽篠が語る”機器投資のトレンド” その3回目。今回のテーマは、「投資とパラダイムシフト」です。早速どうぞ!
J-connect編集部(J編):ずばり、投資とパラダイムシフトの関係に見る、昨今のトレンドはありますか?
曽篠:従来は、「機器ありき」の商談が殆どでした。「既設機が老朽化しているから」「4色機か両面8色機か?」「UVか?LEDか?」などが、典型です。ところが最近は、モノではなくHow toに関して、国内外の潮流や成功事例を尋ねられる事が非常に多いと感じています。もっと直接的に、「こんな製造工程を構築するためには、どうすればいいか?」といったご相談を頂くケースもあります。そこから、目指すべき姿を模索し、現在地を確認し、理想に近づくためのマイルストーンを設定します。目指すべき道を最短・確実に進むために必要な機器は何かをお客様と一緒に考え、そこで初めて機器を選定するのが、最近の製品担当の役目とも言えます。
前者と後者の最大の差は、数年後の姿です。デバイスありきで投資を考え、やり方を変えない場合、最新の機器を使って従来と同じ手法を繰り返す事になります。実際、国内の印刷業界を俯瞰的に見ると、印刷物製造工程や品質管理手法に関する、How toの部分が10年前と比べて劇的に変わったとは言えないケースも少なくありません。もちろん、機器が進化した分のアドバンテージはありますが、仮に現在の手法が10年前と劇的に変化していない場合、且つ今後も同じコンセプトで投資を行った場合、モノの作り方だけにフォーカスすると、数年後も十数年前と同じという事になりかねません。もちろん、これはパラダイムシフトとは呼べません。
5年後、10年後へ向けて歩き出したお客様は、仮に3年後にはまだ理想形が完成していないとしても、3年後なりの姿があります。この時点で、両者の間には十数年分以上の意識・技術格差が生じるとも言えます。過去から続く既定路線にある今日といよいよ決別し、望むべく明日へと続く今日に乗り換える必要性を感じているお客様が、投資をそのトリガーとしてお考えになるケースは少なくありません。各社、改善を積み重ねては来たものの、小ロット多品種化の流れは続き、印刷単価の下落や資材コストの高騰も、やはり直近の十数年で直面し続けてきました。結果、同じものを同じ量、同じ手法で製造し、仮に同じ価格で販売しても、手元に残るお金は十年前と比べて目減りしている、という事態になりかねません。そんな過去の十年に決別すべく、先に述べた5年後、10年後へ向けてパラダイムシフトを模索するお客様が随分増えたと感じています。
J編:前回、総額の大小は、投資の重要性や得られる結果に必ずしも比例しないというお話がありました。金額以外で、顕著な昨今の傾向はありますか?
曽篠:一般的に、日本の印刷会社様のP/Lに於ける設備投資の割合は、売上に対して4.5%程度と言われています。仮にこれがコンマ数パーセント増えたとしても、同60%程度の直接コストをそれ以上に下げることが出来れば、あるいは売上そのものを増やすことが出来れば、投資としては成功と言えます。但しこれは机上の計算に過ぎず、昨今の不透明な社会情勢では当然リスクも高まります。もちろん、バジェットありきが前提ではありますが、重要なことは投資の配分と考えています。ここまで、先進的なお取り組みの事例を挙げましたが、そうは言っても今あるお仕事を賄う事が大前提です。ですので、投資総額の少なくとも50%は、今あるお仕事を生産するための仕様に充てる必要があります。残りの50%の内、25%はそれらを現在と比べて効率的に生産するために充てたいですね。そうすると、投資総額の75%を使って、今あるお仕事の効率性を高めることになります。会社規模の大小を問わず、未来に渡って潤沢な人員を確保することが困難を極める今、同じものを同じ量、同じ品質で生産するのに必要な時間や人員を半減することは、極めて重要なポイントです。事実、先ほど述べた、一般的な日本の印刷会社様のP/Lで製造コストの次に大きなパイを占めるのは人件費と言われています。まさにTime is money、先進的なお取り組みをされているお客様の中には、「印刷会社は時間を売っている」と表現される方もいらっしゃいます。今後増々、この傾向が強まるのは疑う余地がありません。
話を残り25%に戻しましょう。私がよくお客様と話すのは、この25%を、更に次の投資への布石とする為のアイデアです。ここまで述べてきたように、最新の機器を導入しても、今と同じ手法ではパラダイムシフトとは言えません。5年後、もしかしたら15年後かも知れませんが、現在導入を検討している機器が、生産機としての役目を終える頃、つまり、次の投資を検討する際に、今とは違う視点で投資を考えている必要があります。世の中は、今後も加速度的に変化し続けます。この先の5年は、過去の5年とは比較にならないほどの速度で変化し続けるでしょう。今とは違う手法にチャレンジし、5年後には5年後の、10年後には10年後のマイルストーンを設け、その間の世の中の変化には柔軟に対応しつつ、更に次の投資でその先の10年を描くことが企業としてのサスティビリティへとつながります。その為のコストとして、残りの25%をどう使うかをお客様と考えます。将来に渡るアドバンテージを得るために資金を投入する、まさに「投資」です。言葉にするのは簡単ですが、これらの配分比率の実現は、総額の大小によらず実際には非常に難しく、特に経営層のパラダイムシフトに向けた強い信念が必要とされるケースが殆どです。一方で「投資」されたお客様ほど、総じて導入後の効果や満足度が高いことも事実です。今見えている事案だけにフォーカスすると、変えない理由が先に来てしまいますが、そうではなく、どうすれば変えられるか?を第一にお考えになるお客様が一歩先に進み、時代の流れの速さから、その一歩が数か月後には大きな違いを生み、数年後には補完出来ないほどの格差が生じる、つまりティッピングポイントを迎えかねない点こそが、昨今の最大のトレンドかもしれません。
さて、次はいよいよ最終回です。お楽しみに。ご質問等ありましたら、ハイデルベルグ・ジャパン (03-5715-7374) までお気軽にお問い合わせください。
”製品担当者に聞く、機器投資のトレンド その1”はこちらから。
”製品担当者に聞く、機器投資のトレンド その2”はこちらから。