おはようございます!
ハイデルベルグ・ジャパンは、お客様がデジタルトランスフォーメーション、DXを進めるためのデジタルソリューションを多く提供しています。が、皆さん、ハイデルベルグ・ジャパン自身がDXをどう進めているのか、興味ありませんか?そこで、今日は、ハイデルベルグ・ジャパンで、社内のDX推進役を担うリーダーのうち二人、財務を担当する佐々木統子取締役と技術サービス部門(ライフサイクルオペレーションズ本部)を担当する大西正彦執行役員に話を聞いてみることにしました。お客様がDXを社内で進める上で、是非参考にしていただければ思います。
J-Connect編集部:最初の質問ですが、ハイデルベルグ・ジャパンはなぜDXを進めているのでしょうか?まずは、佐々木さん、財務部の視点で教えて頂けますか?
(ハイデルベルグ・ジャパンでは、社員同士で肩書を付けて呼ぶことはしません。社長も、私たちは、バウアーさんと呼んでいます。)
佐々木:財務部の視点となると、まずは、経済産業省から2026年をめどに約束手形の利用を廃止する方針が示されたこと、また、仕入先からの電子請求書や経費精算時の電子データの活用を促された電子帳簿保存法の改定が、DXを進めるきっかけとなっていると思います。法整備が整うこととその変化を支えるプラットフォームも進化が進みますので、そういった環境の整備ということは、財務の視点からは、DXをスタートする上で大きかったと思っています。感染症対策がきっかけと思われがちですが、私たちは、それ以前からDXを進めていました。もちろん、これらの新しいプロセスが感染症対策に有効であることは間違いありませんが。また、ハイデルベルグでは、2022年1月から海外のシェアドサービスセンター(各国にあるハイデルベルグの一部の仕事をまとめて行う)に売掛金・買掛金業務の一部を委託することになったために、そのことも環境の変化のひとつとして、DXを進める上で後押しとなりました。つまり、財務部としても、お客様に対してよりよいサービスを提供し続けていくために、変化する環境に対応するためにDXを進めたというのが答えでしょうか。
佐々木統子取締役
J編:ありがとうございます。それでは、大西さん、技術サービス(ライフサイクルオペレーションズ)の視点からはどうでしょうか?
大西: 変な言い方かもしれませんが、お客様にさらなる付加価値を提供するために、もっと”早く”、”楽に”、”正確に”、仕事ができないかといつも考えています。そのソリューションとして、DXが最適だと考えたからではないでしょうか。具体的には、3年前に、同一労働同一賃金の導入のセミナーに参加した際、RPAの詳細を知り、その後 どのRPAを採用するか検討とテスト運用を実施して、2年前よりRPAの運用を始めました。それが社内DXのスタートです。まず、取引先の注文書情報と請求情報の確認について、人が実施していた作業をAI-OCRで請求書をスキャンしてデータ化して、RPAを利用してマッチングさせることをしました。これにより、1名分の仕事が軽減されています。
*RPAとは「Robotic Process Automation /ロボティック・プロセス・オートメーション」の略語で、主にデスクワークの定型業務を自動化するソフトウェア。ロボットと呼ばれる個々のプログラムを作成、利用し、定型マニュアル業務を自動化します。
大西正彦執行役員
J編:お話を聞くと、ハイデルベルグ本社が出てきませんが、ハイデルベルグ・ジャパン社内のDXは本社からの指示、プレッシャーはなかったのでしょうか?
佐々木:先ほどお話したシェアドサービスセンターは、本社が関係していますが、基本的に、私たちがDXを始めたのは、本社からの指示ではありません。デジタルテクノロジーに強い社長のバウアーさんを先頭に、環境の変化へ素早く対応するためと、お客様に対してもっと付加価値を提供するためにもっと早く楽に正確に仕事ができないかというソリューションを探している過程でDXがソリューションとして挙がってきたのだと思います。
大西:本社からのプレッシャー、本社のイニシアティブで進めてきたわけではないですね。むしろ、新型コロナウィルスの感染拡大が、社内DXを大きく推し進めたということは否定できないと思います。今までデジタルツールの利用に積極的ではない人達も、感染拡大でデジタルツールを使わざるを得なくなって、実際使ってみたらとても便利だということがわかって、自ら進んでいったみたいなことは多くありました。又、テレワークの推進にもなりました。
J編:もう少し具体的にDXの取り組みについて教えてください。まずは、財務の分野から。佐々木さんお願いします。
佐々木:いつくかの取り組みを行っていますが、まずお客様からのお支払いの手段として、以前は紙の手形も多くお振出頂いていましたが、お客様からのご理解・ご協力を賜り2年ほどの歳月を経て現在紙の手形はなくなり、電子記録債権(でんさい)やお振込みに完全に移行させていただきました。改めてご協力頂いたお客様にはこの場を借りて感謝申し上げたいと思います。一方、仕入先様からも請求書は、電子データとしてお送りいただいています。また、従業員の経費精算についてもICカード・クレジットカードカードデータをシステムに自動連携させたり、領収書の写真を撮ることでデータ取り込みをさせたりする方法で以前に比べて楽に経費精算できるようになりました。
J編:これはJ-Connect編集のメンバーも大変助かっていますね!エクセルでプリントアウトしたレポートに、領収書をベタベタ貼った用紙をクリップでとめて、経理部まで持って行っていたのが、今やPCやスマホでいつでもどこでも簡単にできてしまう!これは本当に助かっています。J-Connect編集部からも感謝です!大西さん、技術サービスの分野での具体的取り組みについて教えてください。
大西:まず先ほど申し上げたように、RPAを活用できるところはないか、バックオフィスの定型マニュアル業務の見直し、改善、自動化を実施しました。その結果として、現在では定期的データ作成等のために20以上のRPAロボットが稼働しています。日程をプログラムすることで、必要な時に必要な情報が自動的に入手できるようになっています。また、お客様への修理や部品、印刷資材の注文確認書や納品書、請求書も、郵送から電子化しemailにて送付をしております。同様に、修理見積書もFAXからemailへ移行しています。更に現在、保守契約書等の契約書に関しても、電子契約書へ移行しています。私の方からも、この機会にDX推進にご協力頂いたお客様には感謝を申し上げたいと思います。
J編:ありがとうございます。DXは関係する組織すべてが同時に実行して初めて実現する。当然、お客様、取引先様、社員の協力も必須ですね。本当に、ご協力頂いたお客様、取引先様には、感謝!感謝!です。それでは、ここで本音を聞かせてください。(笑)社内のDXはスムーズに進んできましたか?
佐々木:「何の問題もなくスムーズに進みました!」という状況では正直ありませんでした。今までと違うことをする、というのは簡単なことではありません。組織の中で小さなことでも何かを変化させることは勇気のいることですし、さらに、お客様、取引先様と共に変化を進めていくためには、常に、その先にあるものを意識して社内の各部署と連携・協力をする必要がありました。一気に目標に達成することも難しいので、段階的なステップの設定、また、達成度を測定する指標を見ながら、データを活用しつつ優先順位をつけて取り組むことは有効な手段だったと思います。
また、変化は小さくスタートして小さな失敗に遭遇し、それに対する改善策を図る、必要があれば軌道修正を行うといったことを行い、その後、大きく変化の輪を広げていく、ということも徹底したことの一つです。完璧を目指して何も始めない、もしくは、一気に初めて多きく失敗する、という2つのリスクをマネージすることを心掛けました。いくつかの変化を起こす小さなプロジェクトをする上で、知っておいてよかったことと致しましては「変化曲線」があります。(この変化曲線は、ハイデルベルグサブスクリプションに含まれる前準備時間短縮トレーニングにも取り入れられています。)変化に対する心理的な反応の段階を示したもので「ショック→否定→不満→受け入れ→チャレンジ→知識→本当の理解」という段階を経ることが知られており、この図を確認しながら我々が今どの段階にあるのか、ということを確認すると同時に「本当の理解」という目標を見失わずに少しずつ目標を達成することができたように思います。
大西:最初のDX化の説明(例えば、RPA利用の合理化、email化の利便性)をすると、皆さん賛成なのですが、実務的詳細プロセスになり本人プロセスに関連してくると機械では判断できないとか、内容が複雑で単純化できない等の意見が出てきて、変化や変更に対する抵抗を感じました。ツールやデータを使うことは、難しくないのですが、保守的な人たちの気持ちを変えることが一番難しいと感じています。また、何でもかんでも簡単にDX化できると思っている人もいて、ちょっとした事でできないことがあると、すべてがダメだと否定してしまう人たちもいました。細かな内容の業務改善をして、それをデジタルツールを使って合理化していくことを理解してもらうまでには、時間がかかりますね。でも、あきらめずに何回も説明することが重要だと思っています。
J編:ここまでさまざまな取り組みについてお伺いしてきましたが、これでハイデルベルグ社内のデジタルトランスフォーメーション(DX)は完了でしょうか?もし今後予定されている取り組みなどがあれば教えてください。
佐々木:いえいえまだDXは道半ばです。今後契約書の電子化、仕入先様への発注プロセスの簡素化、お客様・サプライヤ様との経理データの共有方法の改善等々、まだまだDXは続きます。初めに述べたシェアドサービスセンターへの業務移管も、業務を集中した先にさらなるデジタル化が計画されています。お客様、仕入先様に価値を実感していただくためには、適時的確に正確なデータを共有したり、情報を共有することでさらなる改善活動を進めながらも、従来通りに安心してお取引を行っていただけることが重要だと思います。「デジタルトランスフォーメーションは一夜にしてならず」ですが、最新の技術を業務に取り入れながら、お客様・仕入先様に、取引がしやすくなったと実感いただけることを引き続き目指して活動していくつもりです。
大西:私たちも同じで、社内DXはまだ始まったばかりです。まだまだ、さまざまな業務プロセスの見直し、改善が必要です。私たちは、今、お客様に対して、Always a Step Ahead Supportという新しいサービスサポートを提案しています。次々と登場する新しいデジタルデータとツールを活用し、お客様の装置の突発修理を削減、機械の状態を良好に保ち、修理は可能な限り早く完了することを目指しながら、お客様の生産性向上とコスト削減を実現させていきます。こうしてお客様にご提案しているデジタルツールと同じように、社内で利用可能なデジタルツールやデジタルデータも日々増えています。それらを有効活用してDXを進めて行く予定です。お客様へご提案するDXと社内の管理業務のDXの内容は違いますが、業務改善の本質は、生産現場である印刷工場の業務でも、現場をバックアップする事務所での業務でも全く同じことですので、社内で実施した内容については、お客様へのこのサポートに関しても非常に有用なデータとなっています。そして、これらを積極的に進めて行くには、プロジェクトリーダーの強いリーダシップが必要であると感じています。
J編:ハイデルベルグ・ジャパンでの社内DXの様子がよくわかりました。デジタルトランスフォーメーションは一夜にしてならず。DXを進める上で今どの段階にあるのか、ということを確認しながら、目標を見失わずに、関連各所にはあきらめずに何回も説明し、強いリーダシップを発揮していくことが大切であることが、深く理解できました。ありがとうございました。
ハイデルベルグ・ジャパン株式会社代表取締役社長ヨルグ・バウアーが語るDXはこちらから!