おはようございます!
全国をまわってさまざまなお客様の声に耳を傾け、いろいろな現場を見て歩いている製品担当者だからこそ語れる機器投資のトレンド。前回は、僅か数年前に導入し、高い生産性を実現している8色両面兼用機を入れ替え、Push to StopコンセプトのスピードマスターXL 106-8-P、更に2020ジェネレーションのXL 106-8-Pを導入し、驚異的な生産性を実現する事で圧倒的な差別化を図るお客様の事例が登場しました。今回は、その第2回目、どんな話が出てくるでしょうか?ハイデルベルグ・ジャパンの製品担当部署エクイップメントソリューションズ本部の曽篠が語ります。
J-connect編集部(J編):前回は高額な投資を決断された事例が紹介されましたが、投資は高額でなければ意味がないのでしょうか?
曽篠:もちろん、そんなことは決してありません。例えば、印刷営業の方が、クライアントとフェイストゥフェイスで打合せを行う事が出来ず、オンライン校正を導入されるのは分かり易い一例です。クライアントに対する品質担保がデジタル化すると、当然、製造工程にも影響を及ぼします。従来は品質管理が個人の感覚や感性に依存する場面が散見されましたが、クライアントとの合意が数値化される為、数値やデータで品質を担保する必要があります。そのための、分光光度計を用いた測色機の導入も投資のひとつと言えます。クライアントとのコミュニケーションや品質担保の手法が変わる訳ですから、品質管理のDX(デジタルトランスフォーメーション)とも言えます。このように、投資の大小が変化の幅を決めるのではなく、How toを変える事に重要な意味があります。しかし、習慣や慣例を変えることほど難しいことはありません。従来と同じ、今と同じが心地よく感じてしまうのは、個人も会社も同じでしょう。コロナ禍によるあまりにも特別な時期であり、過去に経験したことが無いようなスピードで世の中が変化しているのが現在です。だからこそ、変革のチャンスと位置付けて何かを変えたり、始めたりする事が、一年後、三年後、数年後には、競合他社との差別化に於けるティッピングポイントとなり得ます。
前回お話したお客様の事例でも、受注から出荷までのプロセスや、物理的な刷版・後加工のハンドリングもポイントです。印刷機の生産性だけが向上しても、印刷工場としてのスループットが向上しなければ意味がありません。刷版がなければ印刷はできず、後加工のキャパシティが低ければ出荷できません。そもそも、工場全体のプロセスを最適化し、一気通貫でデータをハンドリングすることこそが自動化の核となるので、これらのプロセスへの投資は、工場全体のDXにとって最重要であり、最優先で考慮されるべきです。
J編:確かに、印刷業界でもDXが進んでいますね。DXへの投資に関して、他にも顕著な潮流はありますか?
曽篠:国内の自動車業界でも、各メーカーがこぞって自動運転を謳い、高級車だけではなく一般的な車種にも様々な自動運転機能や安全運転サポート技術を採用しています。従来の自動車の概念を離れ、社名をモビリティに変更した販売店もありますね。同じことが印刷業界でも起こっていると思います。印刷機に話を戻しますが、前回ご紹介したお客様ではPush to Stopコンセプトを駆使して、「オペレータが印刷機を使って印刷する」のではなく、もはや「印刷は印刷機が行う」世界に突入されています。では、XL106でなければDXは成しえないのかと言えば、もちろんそんなことは全くありません。Push to Stopは最上位機種専用のオプションではなく、新しい時代に求められるオペレーションコンセプト全体を指します。特に日本の商業印刷では、菊全やA全用紙を用いるお仕事が多く、B1フォーマットを必要としないケースも少なくありません。世界中で圧倒的なインストールドベースを誇る102シリーズを既にお持ちのお客様では、版サイズの種類を増やしたくないケースや、部品や資材の共用をご希望されるお客様もいらっしゃいます。ハイデルベルグも、印刷の概念を刷新すべく、最新の自動化・合理化機能を次々とXL以外の機種にも採用しています。
投資額の大小と、投資によって得られる結果や変化の重要性は、必ずしも比例しない事は先に述べた通りです。これを前提に言えば、お客様からよくお聞きするのは、会社の文化や習慣を変える困難さと、投資がパラダイムシフトへ動き出すトリガーとなり得る、この2点です。次回は、より具体的にパラダイムシフトと投資の潮流に関する事例をご紹介します。
印刷業界に於ける様々なDXと、パラダイムシフトを意識して投資を検討されるお客様が多い事が分かりました。次回は、より具体的にパラダイムシフトと投資の潮流を考察します。
”製品担当者に聞く、機器投資のトレンド その1”はこちらから。