おはようございます!
ハイデルベルグ・ジャパンは、現在、「Always A Step Ahead Support」というスローガンを掲げ、デジタルツールを活用したさまざまな新しいサービスを展開しています。今日は、その「Always A Step Ahead Support」を現場で実践するハイデルベルグ・ジャパンで技術サービス部門を率いるライフサイクルオペレーションズ本部執行役員の大西氏にインタビューしてみました。いつもより長いですが、少しでも早く皆様に全貌をお伝えしたくて分割するのを止めて、一度でご紹介することと致しました。是非、ご一読頂ければ幸いです。
J-Connect編集部(J編):まずは「Always A Step Ahead Support」について教えてください。
大西:「Always A Step Ahead Support」は、直訳すると「常に一歩先のサポート」ということなのですが、これはお客様の生産性をより向上するにはどうしたらよいかを考えた時に、ハイデルベルグがたどり着いたひとつの答えです。今、Push to Stopと並ぶ、ハイデルベルグ・ジャパンが掲げているスローガンのひとつでもあります。その狙いは、「壊れてから」ではなく「壊れる前に処置する」ことによって、お客様の機器のダウンタイムを最小限にして生産可能な時間を最大限にしようということです。例えば、お客様の機器のステータス(インターネットを介したリモート接続をしている2010年製造以降の印刷機対象) をお知らせしてトラブルの原因になりそうな箇所を早い段階で処置することで、長時間の機械停止や高額の修理費に繋がり兼ねない大きな事故を防ぎ、納期に影響を与えかねない予期せぬダウンタイムを避けることによって、生産性のさらなる向上や、修理コストの削減を実現するというサポートです。
J編:どうして「壊れる前に処置する」ことが、可能なのでしょうか?
大西:例えば、ハイデルベルグの枚葉印刷機スピードマスターには最大3000個のセンサーが付いていて常時印刷機を監視しています。専用コンピューターが完全自動でクラウドの印刷機1台当たり年間5億個におよぶビッグデータを監視し、トラブルの予兆を分析、発見しハイデルベルクアシスタントを通じて分析結果とその対応策をお知らせします。自動刷版交換機器を例にとると、版交換の際に版が正確に取り付けられているか、取り外されているかを常に監視しています。版交換時に何らかの異常が検知された場合は、異常の内容と対応策がハイデルベルグアシスタント経由でお客様へ通知されます(Pコール)、及び弊社のカスタマーケアセンタにも同様の内容が送られます。これが、私たちハイデルベルグが予知保全(プレディクティブモニタリング)と呼んでいる「Always A Step Ahead Support」のひとつです。
又、印刷機の再起動、用紙搬送エラー、及びインキローラー、ブランケット、圧胴の再洗浄の機器ステータスに関して、常時監視しており、通常より頻度が多く異常と判断した場合、ハイデルベルクアシスタントのPAT(Performance Advisor Technology)にてPAT推奨アクションとして機器の状態改善アクションが通知されます。
さらに、サブスクリプション契約、フルメンテナンス保守契約、保証期間の印刷機に関しては、弊社の技術者が毎週上記の機器ステータスをモニタリングしており、異常がある場合は弊社よりお客様へお知らせし、改善のアクションを提案させていただいております。
PATは、AI (人口知能)が印刷機の生産性を自動分析し、生産性低下傾向の項目を通知その改善アクションをアドバイスします。
上記の再起動等の機器ステータスに関連する内容に加え、生産性(OEE)改善につながる準備時間、印刷スピード、良品生産性等に関しての生産性低下の要因と改善アクションも通知されます。通知されたアクションの実施内容を保存するとAIがそのデータを記憶しお客様の印刷機に対してより的確なアクションを通知するように学習し進化して行きます。
例えば、2枚差しの回数が過去12か月の平均より多く検知された場合は、その影響で、増加した損紙数と2枚差し解消に費やした時間(生産時間のロス時間)が明示され、さらにエアー量、サクションヘッド位置、シートセパレータースプリング設定の確認、工場内環境(温度や湿度)の確認、及び用紙品質の確認等の解消のためのアクションの提案がなされます。
こうしたハイデルベルグが業界でもいち早く取り入れてきた最先端のデジタルテクノロジーの数々が、「壊れる前に処置する」ことを可能にしているのです。
J編:とは言え、100% 故障や事故が防ぐことはできませんよね?
大西:もちろん100%とはいきませんが、ハイデルベルグではそうしたトラブルが発生した場合でも、少しでも効率よく処置ができるような施策を次々と打ち出しています。ちょうどこの4月に正式にリリースした「エキスパートLIVEサポート」も、その施策のひとつです。
J編:エキスパートLIVEサポートとは何ですか?
大西:エキスパートLIVEサポートは、お客様からの修理のお問い合わせを迅速に効率的に対応させていただくサービスです。
お客様からの修理のお問い合わせに関しては、弊社技術エキスパート(テクニカルヘルプデスク)が、弊社の全世界の既存修理案件データを集積したKnoXビッグデータやサービスポイント(図面や該当部品の技術データ検索ソフト)等の社内ツールを駆使して、最適な解決方法を提供しています。これにより、お問い合わせの50%は、サービス技術者を派遣しないで解決しています。
エキスパートLIVEサポートでは、お電話での修理のお問い合わせに加えて「電話では伝えるのが難しい」という内容に対してオンラインビデオサポートを提供しています。弊社エキスパートが、お客様のスマートフォン等を介して送られてくる現場のリアルタイム映像情報をモニターで共有することによって、不具合の原因を詳細かつ早急に特定するサービスです。オンラインビデオサポートを利用した場合の問題解決は、60%以上で、お電話のみの対応よりも10%以上のケースでサービス技術者の派遣なく解決しています。さらにサポート時間も電話のみの時と比較して半分以下の時間で解決に至っているケースも多々あります。
さらに、トラブル遠隔解析サポート(インターネット介したリモート接続している機器が対象)の利用が有益と判断できる不具合等に関しては、このサポートを利用して当該機器のログデータや機器状態を正確に把握することにより、的確な解決方法を導き出すことが可能となります。このサポートを利用した場合のサービス技術者の派遣無しでの問題解決は、70%に達しています。
これら意味するところは、お客様にとっては、機器ダウンタイムの削減、及び弊社サービス技術者の訪問修理の回数や修理時間を削減できるということです。つまり、お客様のコスト削減及び生産性向上につながります。
また、訪問修理が必要な場合でも、上記サポートにより、不具合原因の把握ができ、正確な必要部品の手配や最適なサービス技術者の派遣が可能となります。これにより、現場での効率的な修理作業が可能となり、その結果、修理時間の短縮が実現できます。
エキスパートLIVEサポートのビデオがありますので、是非、こちらもご覧頂ければと思います。
J編:「壊れる前に」何かするという意味では、メンテナンスも重要だと思いますが?
大西:そのとおりです。機械を最高の状態に維持しておくためには、メンテナンスは欠かせません。が、さまざまな業務を忙しい中こなさなければならないオペレータの皆さんにとって、常にタイムリーに適切なメンテナンスを行うのは容易ではありません。そこで、そのメンテナンスの方法を劇的に変える弊社の新しいデジタルツール「メンテナンスマネージャー4.0」がハイデルベルグからリリースされています。ハイデルベルグアシスタントとアンドロイドスマートフォンを使用してご利用頂くことが可能です。この「メンテナンスマネージャー4.0」は、紙ベースのメンテナンスマニュアルを置き換えるだけでなく、お客様のメンテナンスを計画するための優れたツールであり、使いやすいアプリケーションです。言うまでもなく、今までメンテナンスに費やしていた時間やコストが削減でき、機械も最高の状態にしておくことが可能となります。
「メンテナンスマネージャー4.0」は、サブスクリプション契約、フルメンテナンス保守契約、プロフェッショナルメンテナンス保守契約加入のお客様が無料で利用可能です。
J編:ありがとうございました。ハイデルベルグの「Always A Step Ahead Support」は、まさに昨年のオープンハウスのコピーともなっていた「パラダイムシフト」だということがよくわかりました。ありがとうございました。