おはようございます!
生産性を考える際に、各設備が持つ性能は重要ですが、そのパフォーマンスを正しく発揮し、維持することも性能と同じく、極めて重要な要素となります。
そこで本日は印刷業界全体のサービスの概況について、またハイデルベルグ・ジャパンが提供しているサービスの特徴について、執行役員 ライフサイクルオペレーションズ本部 本部長の大西氏にインタビューをしてみました。
J-Connect編集部(以下、J編): 印刷業界におけるサービスについて、現在の状況を教えてください。
大西: サービス関連の対応について、現在弊社ではコールセンターで電話を受けておりますが、その多くは突発的な事故や不具合による対応で、8割以上を占めています。
この突発対応というのは、つまり機械が急に壊れる訳です。トラブルの状況によっては、修理完了までの間はダウンタイムとなりますし、時間的なプレッシャーもあり、仕事の納期等のリカバリーするために、他の印刷機や外部の協力会社に仕事を回さざるを得ないこともあります。このような場合は、何よりも突発的な高額出費となるので、印刷会社様にとっても損失が大きいものと思っています。
これを解消するために弊社では定期的に点検を行い、計画的に修理をさせていただくようにお勧めをしておりますが、現実にはあらかじめメンテナンス予算を持っていないケースが多いのも「壊れたから直す」流れとなる理由の一つです。
J編: その上でハイデルベルグが目指しているのは、どのようなものでしょうか。
大西: 一つは私たちサービスの中ではよく言われていることですが、「火消しから火の用心へ。壊れる前に直しましょう」ということです。
もともとは予防保全として、過去の経験値や作業履歴などに基づき、点検し、直していこうという取り組みを展開していましたが、今は予知保全です。これは機械検知型の保全とも言え、3000個以上のセンサー等の信号によるビッグデータに基づいた傾向分析をもとに、故障の予兆を検知し、事前に修理していくというものです。
車で例えますと、エアバックのようなぶつかった際のダメージを小さくしましょう、というものから、自動ブレーキのような事前に事故を防ぎましょう、という考えの進化と同じです。
当社は、世界中で25,000台が接続された20年以上にわたるデータベースがもとになっており、ハイデルベルグの強力な優位性となっています。
もう一つは、私たちはパフォーマンスサポートと呼んでいますが、機械の使い方だけではなく、多岐に渡るサポートをご提供することでお客様の生産性を高めることです。これはプロジェクトマネジメントの専門チームが事前に設定したOEEの達成目標に向けて、現状分析、業務フローの改善などのサポートをご提供しています。
さらに、現在はサービスのご用命はお電話でいただくことがほとんどですが、それを今後はハイデルベルグアシスタントに加え、例えば定型の問合せはウェブで、ご相談はメールやお電話でというように、その時々の内容に適した方法を利用することで、お客様にとっての利便性の向上と、ひとつひとつのご対応の質を上げていきたいと思います。
J編: 将来的なビジョンのうち、具体的な取り組みをいくつか教えていただけますか?
大西: 様々な技術が進歩している中ですので、それらを利用することで、より時間や場所を問わずに安定的な対応ができるようにしたいと思います。現在、スマートフォンを利用した遠隔的なサポートを数社のお客様とテスト中です。これはお客様と弊社のスタッフが同じ画面を共有し、状況を確認しながら対応ができるため、作業精度の向上や効率化が見込めます。
J編: その他、特徴的なサービス内容はありますか?
大西: 先ほどビッグデータのお話の中で触れましたが、リモートサービスについて、日本国内では接続可能な機械の80%をサポートしている状態です。また予知保全についてはドイツ、アメリカなど海外ではすでにはじまっており、日本では2015年以降の機械を対象に、6月からの展開を予定しています。
J編: 最近目にすることも多いハイデルベルグアシスタントとは、どのようなものですか?
大西: 当社の装置やサポートに関することで何かあった時や、ご質問があるときの窓口のポータルだと思っています。
機械のパフォーマンスやOEEが見られたり、eShopにアクセスしたり、サービスの依頼・見積もり依頼や、サービス、部品、消耗品の請求が管理できるなど、多くのことをここから得ることができます。
今後さらにサービスの種類が拡大していきますが、その際にもハイデルベルグアシスタントの利用によって確認作業がシンプルになるだけでなく、情報をいつでも簡単に取得できるツールとなっています。また、実際にサービスや使い勝手を体験いただくため、アシスタントを経由してサービス見積もりの依頼をいただいた方を対象としたキャンペーンも計画しています。他のサービスに対してもぜひキャンペーンを実施して行きたいと考えています。
J編: 日本中で質の高いサービスをご提供するために取り組んでいることは何ですか?
大西: お客様からいただくお電話は膨大な数であり、またどのご対応も非常に重要なものと考えております。そのためコールセンターのさらなる品質向上を図る上で、会話内容をベースとした対応評価システムやトレーニングを実施しています。また将来的には音声認識を利用し、応対内容の分析、具体的には聞き取りやすいスピードや適切な説明が出来ているかどうかをつねにチェックできる環境を整えることを検討しています。
また、コンタクトセンター検定といったコールセンターの資格試験も合わせて活用して行く予定です。
実際に機械をサポートするエンジニアチームにおいては、ドイツにおいて技術トレーニングを毎年行っており、また技術トレーニングに加え、製品の生産工場の視察も行っています。モチベーションも関わる分野ですので、自主性を重んじて技術評価、英語力トレーニング、業務の難易度の評価などを行い、各自のチャレンジや努力が反映されるようにしています。現在すでにアジア地域を中心とした、他国のサービスサポートを行えるようになってきていますし、今後もさらに加速、拡大させたいと思っています。
お客様の対応の質を向上するとともに、継続的に向上できるような運営を並行して考えております。